賃上げ促進税制とは、従業員の給与等を前年度より増やした企業の法人税(個人事業主は所得税)を税額控除する制度で、中小企業向けは租税特別措置法第42条の12の5に規定されています。中小企業は、雇用者給与等支給額の前年度比増加率が1.5%以上で15%、2.5%以上で30%の税額控除が基本となり、教育訓練費の増加や仕事と子育ての両立支援要件を満たすと上乗せされ、最大45%まで拡大します。控除額は法人税額の20%が上限ですが、控除しきれない分は5年間繰り越せるため、赤字企業でも将来活用できる点が特徴です。本記事では、適用の判定から申告書記載までのステップを税理士法人みらいが整理します。
賃上げ促進税制とは
本制度は、賃上げを行った企業を税制面から後押しするものです。中小企業向けの概要は以下の通りです。
| 項目 | 内容(中小企業向け) |
|---|---|
| 根拠 | 租税特別措置法第42条の12の5 |
| 基本控除 | 増加率1.5%以上で15%、2.5%以上で30% |
| 上乗せ | 教育訓練費+10%、両立支援+5%(最大45%) |
| 控除上限 | 法人税額の20% |
| 繰越 | 控除しきれない額を5年繰越(中小) |
制度の活用ガイドは中小企業の賃上げ促進税制(2026年度)活用ガイドもご参照ください。
STEP1:増加率の判定
まず、当期と前期の雇用者給与等支給額を比較し、増加率を算定します。
| 増加率 | 基本の税額控除率 |
|---|---|
| 1.5%以上 | 控除対象額の15% |
| 2.5%以上 | 控除対象額の30% |
判定の基礎となる給与等支給額の範囲(対象となる給与・除外項目)は制度上の定義に従います。決算賞与による賃上げも増加額に資する場合があります(決算賞与の税務処理参照)。
STEP2:上乗せ要件の確認
基本控除に加え、次の要件を満たすと控除率が上乗せされます。
- 教育訓練費:前年度比10%以上増で+10%(教育訓練費の明細保存が必要)
- 両立支援:くるみん認定・えるぼし認定等の取得で+5%
- 上乗せを合算し、最大45%まで拡大
教育訓練費の活用は中小企業の人材育成投資と教育訓練費の税務もご参照ください。
STEP3:控除額の計算と上限
控除率が決まったら、控除対象となる給与等支給増加額に控除率を乗じて控除額を算定します。
- 控除額 = 給与等支給増加額 × 控除率(最大45%)
- 控除上限 = その事業年度の法人税額の20%
- 上限を超える部分は当期控除不可(繰越の対象)
正確な「控除対象雇用者給与等支給増加額」の算定は制度の定義に基づきます。最新の計算方法・上限は国税庁・中小企業庁の公表値をご確認ください。
控除しきれない場合の5年繰越
中小企業は、当期に控除しきれない金額を翌期以降5年間繰り越せます。
- 赤字・法人税額が少ない年度でも将来活用できる
- 繰越には継続適用などの要件がある
- 繰越額は別表で管理
この繰越制度により、賃上げを行った年に十分な法人税額がなくても、後年度の黒字化時に控除を取り戻せます。
申告書への記載と保存資料
適用には確定申告書への別表添付と明細記載が必要です。
| 手続き | 内容 |
|---|---|
| 別表の添付 | 税額控除に関する別表で控除額を計算・記載 |
| 教育訓練費明細 | 上乗せ適用時に実施内容・金額の明細を保存 |
| 両立支援の証明 | 認定取得の事実を確認できる資料を保存 |
| 給与データ | 当期・前期の給与等支給額の集計資料 |
事前認定は不要ですが、要件充足を裏付ける資料の整備が重要です。最新の様式は国税庁の公表をご確認ください。
よくある質問
Q. 役員報酬の増加も対象になりますか?
A. 賃上げ促進税制の給与等支給額は、原則として使用人に対する給与が対象で、役員やその親族などへの給与は除かれます。判定の基礎となる範囲を正しく区分することが重要です。
Q. 設立初年度でも適用できますか?
A. 前期との比較ができない設立初年度は、原則として比較対象がないため基本的な適用が難しい場合があります。適用可否は個別の事業年度の状況によるため確認が必要です。
Q. 教育訓練費の上乗せは少額でも使えますか?
A. 前年度比10%以上の増加が要件です。金額の多寡ではなく増加率で判定するため、前年度実績との比較が必要です。明細の保存が適用の前提となります。
まとめ
賃上げ促進税制(租税特別措置法第42条の12の5)は、中小企業が増加率1.5%で15%、2.5%で30%の基本控除を受けられ、教育訓練費(+10%)・両立支援(+5%)の上乗せで最大45%まで拡大します。控除上限は法人税額の20%ですが、控除しきれない額は5年繰り越せるため、赤字企業でも将来活用できます。適用には確定申告書への別表添付と明細記載が必要で、教育訓練費の上乗せには明細の保存が前提です。最新の控除率・要件・様式は国税庁・中小企業庁の公表値をご確認のうえ、個別事案は必ず税理士にご相談ください。