設備投資の即時償却・税額控除制度の活用

目次

  1. 設備投資税制とは
  2. 中小企業投資促進税制
  3. 中小企業経営強化税制
  4. 2制度の比較と選択
  5. 適用までの実務ステップ
  6. よくある質問
  7. まとめ

設備投資の即時償却・税額控除制度とは、中小企業が一定の設備を取得した場合に、通常の減価償却に代えて取得年度に取得価額の全額を損金算入(即時償却)したり、取得価額の一定割合を法人税額から直接控除したりできる税制優遇措置です。代表的なのは租税特別措置法第42条の6(中小企業投資促進税制:30%特別償却または7%税額控除)と、中小企業経営強化税制(法人:第42条の12の4/個人:第10条の5の3。即時償却または10%税額控除)の2制度で、経営力向上計画の認定有無が分岐点となります。本記事では、中小企業が設備投資の意思決定時に押さえるべき税制活用のポイントを税理士法人みらいが整理します。

設備投資税制とは

設備投資税制は、減価償却の特例として位置づけられます。通常は耐用年数にわたって費用化する設備取得価額を、特例により早期費用化(特別償却・即時償却)または直接的な税額控除に置き換える制度です。

区分特徴
特別償却通常償却に上乗せで一定割合を償却(30%等)。通算では中立
即時償却取得価額の100%を取得年度に損金算入。通算では中立
税額控除取得価額の一定割合を法人税額から直接控除。通算で恒久的な節税効果

会計上は通常の減価償却を継続し、税務上のみ特別な取扱いをするのが原則です(圧縮記帳ではない)。

中小企業投資促進税制

租税特別措置法第42条の6に基づく中小企業投資促進税制は、認定不要で適用できる基本的な制度です。

項目内容
対象法人資本金1億円以下の中小法人(一部を除く)、個人事業主
対象設備機械装置(160万円以上)、ソフトウェア(70万円以上)、貨物自動車(3.5t以上)等
選択肢A30%特別償却
選択肢B7%税額控除(資本金3,000万円以下のみ。法人税額の20%が上限)
適用期限租税特別措置法上の期限延長で継続適用(最新の税制改正大綱で確認)

赤字法人でも特別償却は将来の繰越欠損金として活用可能ですが、税額控除は当期の法人税額がないと使えません(1年間の繰越あり)。

中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制は、中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を取得した中小企業が対象で、より優遇度の高い制度です。

項目内容
対象法人経営力向上計画の認定を受けた中小法人・個人事業主
対象設備A類型(生産性向上)、B類型(収益力強化)、C類型(デジタル化)、D類型(経営資源集約化)
選択肢A即時償却(100%損金算入)
選択肢B10%税額控除(資本金3,000万円以下、3,000万円超は7%)
計画認定設備取得前に経営力向上計画の認定取得が原則

類型別の要件概要

  • A類型(生産性向上設備):工業会等の証明書、販売開始から一定期間内、年平均1%以上の生産性向上
  • B類型(収益力強化設備):投資利益率5%以上、経済産業局の確認
  • C類型(デジタル化設備):遠隔操作・可視化・自動制御化等、経済産業局の確認
  • D類型(経営資源集約化):M&A後の取得、修正ROA等の指標達成

経営力向上計画の活用法は経営計画と資金調達の連携でも整理しています。

2制度の比較と選択

中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の比較ポイントを整理します。

項目投資促進税制経営強化税制
計画認定不要必要(設備取得前)
特別償却率30%100%(即時償却)
税額控除率(資本金3,000万以下)7%10%
事務負担軽い重い(計画作成・認定申請)
計画期間制約なし3〜5年の経営力向上計画期間内

選択基準としては、①計画認定の事務負担を許容できるか、②投資金額の大きさ(経営強化税制の即時償却効果が活きる規模か)、③税額控除を狙う場合の控除率差(3%差)と認定コストのバランスで判断します。複数設備の組み合わせ(一部は投資促進、一部は経営強化)も検討可能です。

適用までの実務ステップ

経営強化税制を活用する場合の標準的な実務フローは以下の通りです。

  1. 設備計画の検討:投資対象の選定、A〜D類型の判定
  2. 証明書・確認書の取得:A類型は工業会証明書、B/C/D類型は経済産業局確認書
  3. 経営力向上計画の作成:3〜5年の計画期間、労働生産性向上目標
  4. 経営力向上計画の認定申請:業所管大臣(複数業所管にまたがる場合は主たる事業の業所管)
  5. 認定取得:標準処理期間30日(業種により異なる)
  6. 設備取得・事業供用:認定後(一部例外あり)
  7. 税務申告:別表添付で即時償却または税額控除を適用

計画外の設備は税制対象外となるため、設備取得計画の段階で漏れなく計画書に記載することが重要です。

よくある質問

Q. 中古設備は対象になりますか?

A. 投資促進税制・経営強化税制とも、原則として新品設備が対象です。中古設備は対象外(一部例外あり)。

Q. リース取引でも適用できますか?

A. 所有権移転外ファイナンスリースは税額控除のみ適用可能(特別償却・即時償却は不可)です。所有権移転リースは購入と同様の扱いとなります。

Q. 賃上げ促進税制との併用は?

A. 賃上げ促進税制(中小企業の賃上げ促進税制)と経営強化税制・投資促進税制は併用可能です。法人税額の20%上限(合算)の制約があるため、シミュレーションが推奨されます。

まとめ

中小企業の設備投資税制は、租税特別措置法第42条の6の中小企業投資促進税制(30%特別償却または7%税額控除)と、中小企業経営強化税制(法人:第42条の12の4/個人:第10条の5の3。即時償却または10%税額控除)の2系統が中心です。経営力向上計画の認定取得という事務負担と引き換えに、経営強化税制では即時償却・10%税額控除という優遇を得られます。設備投資計画段階から税制適用要件を組み込み、認定取得→設備取得→税務申告の順序を守ることが、確実な税制活用の鍵となります。研究開発税制(研究開発税制(R&D税制)の活用)との重畳活用も検討の価値があります。なお、個別事案は必ず税理士にご相談ください。

この記事の執筆者

税理士法人みらい(東京都西東京市/名古屋支店)。昭和58年開業、平成18年法人化。ISO9001認証取得。元国税局OB税理士を含む15名以上の税理士が在籍し、法人・個人の税務会計をワンストップでサポートしています。

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