研究開発税制(R&D税制)とは、試験研究費に対して法人税額の最大45%を控除できる租税特別措置法第42条の4の制度で、中小企業は一般型より高い12〜17%の控除率が適用されます。大企業向けの一般型に加え、中小企業には控除率を引き上げた「中小企業技術基盤強化税制」、大学・スタートアップ等との共同研究を優遇する「オープンイノベーション型」があります。国税庁の通達や経済産業省の解説を踏まえ、中小企業が活用できるR&D税制を整理します。
研究開発税制の全体像
R&D税制は、(1)試験研究費の総額に対する控除、(2)試験研究費の増加額に対する上乗せ控除、(3)特別試験研究費(オープンイノベーション型)に対する控除、の3本柱で構成されています。
| 区分 | 対象 | 控除率の目安 |
|---|---|---|
| 一般型(総額型) | 大企業等 | 試験研究費増減率に応じて1〜14% |
| 中小企業技術基盤強化税制 | 資本金1億円以下の中小企業者等 | 12〜17%(増加率に応じて上乗せ) |
| オープンイノベーション型 | 全企業 | 特別試験研究費の20〜30% |
控除上限は原則として法人税額の25%ですが、中小企業・ベンチャー企業向けには最大40〜45%まで引き上げる特例もあります。設備投資税制である中小企業経営強化税制と並んで、キャッシュフロー改善効果の大きい制度です。
試験研究費の範囲
試験研究費とは、新製品・新技術の研究開発に要する費用のうち、一定のものを指します。
- 研究者の人件費(専門的知識をもって研究業務に専ら従事する者)
- 研究に使用する原材料費
- 試験研究用の減価償却資産の償却費
- 外部委託による研究委託費
- 共同研究・受託研究に係る費用
- ソフトウェア開発のうち一定の新しい知見の獲得を伴うもの
単なる製品改良・デザイン変更・市場調査は対象外です。当事務所では、顧問先の研究プロジェクトについて「新規性・技術的困難性・独創性」の観点で対象性を判定しています。
中小企業技術基盤強化税制の優遇
中小企業者等(資本金1億円以下)は、一般型に代えて「中小企業技術基盤強化税制」を選択できます。控除率は試験研究費総額の12%が基本で、増加率が一定以上の場合は最大17%まで上乗せされます。
Q. 法人税額の25%を超えて控除できるケースは?
A. 試験研究費割合(売上高比)が10%超の場合や、増加試験研究費の割合が一定以上の場合、控除上限を法人税額の25%から35%〜最大45%まで引き上げる上乗せ措置があります。
Q. 設立直後の赤字企業でも使えますか?
A. R&D税制は税額控除のため、法人税額が発生していない赤字企業では控除しきれません。ただし、繰越欠損金・青色欠損金の繰越により、黒字化した事業年度で過去の試験研究費を活用するという将来視点での設計は可能です。
オープンイノベーション型の活用
オープンイノベーション型(特別試験研究費税制)は、大学・国の研究機関・スタートアップ企業等との共同研究・委託研究にかかる費用を対象とした優遇です。
- 大学等との共同・委託研究:控除率30%
- 特別新事業開拓事業者(スタートアップ等)との共同研究:控除率25%
- その他の民間企業等との共同・委託研究:控除率20%
中小企業が大学・スタートアップと連携する場合、こちらの制度の方が控除率が高く有利なケースが多くあります。大学側との契約書・研究計画書の整備が必要です。
適用に向けた実務ステップ
R&D税制を確実に適用するための実務ステップは以下のとおりです。
- 研究プロジェクトごとの研究計画書・進捗報告書の整備
- 研究者の勤務時間管理(専門的知識をもって専ら研究に従事していることの裏付け)
- 原材料・減価償却資産の研究用途区分の明確化
- 会計上の科目区分(試験研究費として独立計上)
- 申告書別表(別表六(九)等)の作成
法人税申告書の別表記載は専門的知識を要するため、法人向け税務顧問サービスの一環で対応するのが一般的です。なお、個別のプロジェクトが対象となるかは、必ず税理士にご相談ください。
まとめ
研究開発税制は、自社の研究開発投資を税額控除という形で回収できる制度であり、中小企業でも控除率12〜17%、最大45%の法人税額控除と、効果は非常に大きいものです。試験研究費の範囲判定と書類整備が適用のカギになります。税理士法人みらいでは、研究プロジェクトの対象性判定から申告書別表の作成まで一貫してサポートしています。