年末調整とは、給与の支払者が、その年に源泉徴収した所得税の合計額と、年間の給与総額に対して本来納めるべき所得税額との過不足を、その年最後の給与支払時に精算する手続きです(所得税法第190条)。対象は、原則として「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人のうち、年末まで在籍し年収2,000万円以下の人です。本記事では、対象者、必要書類、控除の適用、スケジュールを整理します。
年末調整は、給与所得者にとって1年間の所得税を正しく精算するための重要な手続きです。毎月の給与から源泉徴収された所得税額は概算であるため、年末に実際の所得税額との過不足を調整する必要があります。本記事では、年末調整の対象者や必要書類、各種控除の適用方法、スケジュールについて詳しく解説します。
年末調整とは?何を精算する手続き?
年末調整とは、給与の支払者(会社等)が、その年最後の給与を支払う際に、従業員の1年間の給与総額に対する所得税額を計算し、毎月の給与から源泉徴収した所得税の合計額との過不足を精算する手続きです。
毎月の源泉徴収税額は「給与所得の源泉徴収税額表」に基づいた概算額であり、年間の所得控除(生命保険料控除や配偶者控除など)が反映されていません。そのため、年末調整で正確な税額を算出し、差額を還付または追加徴収します。
ポイント:年末調整は、多くの給与所得者にとって確定申告の代わりとなる手続きです。年末調整を行うことで、大半の給与所得者は確定申告が不要になります。
年末調整の対象になるのは誰?
対象となる人
年末調整の対象となるのは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤務先に提出している人です。具体的には、以下のいずれかに該当する人が対象です。
- 1年を通じて勤務している人
- 年の中途で就職し、年末まで勤務している人
対象外となる人
以下に該当する人は、年末調整の対象外となり、確定申告が必要です。
- 給与収入が2,000万円を超える人
- 2か所以上から給与を受けている人で、他の給与の支払者に扶養控除等申告書を提出している場合
- 年の中途で退職した人(一部例外あり)
- 非居住者
- 日雇労働者など、継続して2ヶ月を超えて支払を受けない人
注意:給与収入が2,000万円を超える方は年末調整ができません。必ず確定申告を行ってください。また、医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税のワンストップ特例を除く)、雑損控除は年末調整では処理できないため、別途確定申告が必要です。
年末調整に必要な書類は?
年末調整を行うにあたり、従業員から以下の書類を回収する必要があります。
| 書類名 | 主な記載内容 |
|---|---|
| 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | 配偶者や扶養親族の情報、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除等 |
| 給与所得者の保険料控除申告書 | 生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除 |
| 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書 | 基礎控除額の計算、配偶者控除・配偶者特別控除の適用、特定親族特別控除の適用、所得金額調整控除の適用(様式名・記載事項は年分により異なるため、最新様式は国税庁サイトでご確認ください) |
| 住宅借入金等特別控除申告書 | 住宅ローン控除の適用(2年目以降) |
また、以下の添付書類も必要に応じて回収します。
- 生命保険料控除証明書・地震保険料控除証明書
- 国民年金保険料・国民健康保険料の控除証明書
- 小規模企業共済等掛金払込証明書(iDeCo等)
- 住宅ローンの年末残高証明書(2年目以降)
主な控除項目と控除額
生命保険料控除
生命保険料控除は、2012年(平成24年)1月1日以降に締結した契約(新制度)と、それ以前に締結した契約(旧制度)で計算方法が異なります。
| 区分 | 新制度(2012年以降) | 旧制度(2011年以前) |
|---|---|---|
| 一般生命保険料控除 | 最大4万円 | 最大5万円 |
| 介護医療保険料控除 | 最大4万円 | (なし) |
| 個人年金保険料控除 | 最大4万円 | 最大5万円 |
| 合計上限 | 最大12万円 | |
地震保険料控除
地震保険料を支払った場合、最大5万円の所得控除を受けることができます。旧長期損害保険料がある場合は最大1万5千円ですが、両方ある場合の合計上限は5万円です。
社会保険料控除
本人や生計を一にする配偶者・親族の国民年金保険料、国民健康保険料などを支払った場合、その全額が所得控除の対象となります。
小規模企業共済等掛金控除
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金や小規模企業共済の掛金を支払った場合、その全額が所得控除の対象となります。
年末調整のスケジュールはいつ?
年末調整の一般的なスケジュールは以下のとおりです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 10月〜11月頃 | 保険会社等から控除証明書が届く |
| 11月頃 | 従業員に年末調整の書類を配布・回収 |
| 12月(最後の給与支払時) | 年末調整の計算を行い、過不足額を精算 |
| 翌年1月10日まで | 源泉所得税の納付(納期の特例の場合は1月20日まで) |
| 翌年1月31日まで | 法定調書・給与支払報告書の提出 |
効率化のヒント:近年はクラウド型の年末調整ソフトを活用して、従業員からの書類回収をオンラインで行う企業も増えています。電子化により、記入ミスの削減や事務負担の軽減が期待できます。
年末調整でよくある間違い
- 配偶者の所得の見積もり誤り:令和7年度税制改正により、基礎控除および給与所得控除が引き上げられ、配偶者控除・扶養控除の所得要件も「合計所得金額58万円以下」(給与収入のみの場合123万円以下)に見直されました。従来の「103万円(給与所得48万円)」の基準で見積もると誤りとなるため、配偶者の年間所得は最新の基準で正確に見積もることが重要です。最新の控除額・所得要件は国税庁の年末調整のしかた等でご確認ください。
- 扶養親族の年齢区分の誤り:16歳未満の扶養親族は扶養控除の対象外です。また、19歳以上23歳未満は特定扶養親族として控除額が63万円になります。あわせて、19歳以上23歳未満の親族について所得要件を超えた場合に段階的に控除が受けられる「特定親族特別控除」が創設されているため、適用区分の確認が必要です。
- 保険料控除証明書の添付漏れ:生命保険料控除や地震保険料控除を受けるには、控除証明書の添付が必要です。
- 前職の源泉徴収票の未提出:中途入社の従業員は、前職の源泉徴収票を提出してもらい、合算して年末調整を行う必要があります。
まとめ
年末調整は、給与所得者の所得税を正確に精算する重要な手続きです。対象者の確認、必要書類の漏れなき回収、各種控除の正確な計算が求められます。特に控除証明書の添付漏れや配偶者の所得見積もり誤りは頻出するミスですので、十分注意してください。
年末調整の手続きに不安がある場合や、複雑なケースへの対応が必要な場合は、専門家に相談されることをお勧めします。
よくある質問(FAQ)
Q. 年末調整の対象にならないのはどんな人ですか?
A. 主なものとして、その年の給与収入が2,000万円を超える人、扶養控除等申告書を提出していない人(乙欄適用者)、災害減免法により源泉徴収の猶予を受けている人、年の中途で退職し再就職していない人などが挙げられます。これらの人は原則として確定申告で精算します。
Q. 年末調整で受けられない控除はありますか?
A. あります。医療費控除、寄附金控除(ふるさと納税のワンストップ特例を除く)、雑損控除、および住宅ローン控除の適用初年度は、年末調整では処理できず確定申告が必要です。住宅ローン控除は2年目以降であれば年末調整で適用できます。
Q. 年末調整のスケジュールはどうなりますか?
A. 一般に、11月ごろに従業員へ各種申告書と控除証明書の提出を依頼し、12月の給与または賞与の支払時に過不足を精算します。その後、翌年1月31日までに給与支払報告書を市区町村へ提出し、法定調書合計表・源泉徴収票を税務署へ提出します。
参考にした一次情報(出典)
- 国税庁が公表するタックスアンサー(よくある税の質問)および各種パンフレット等の公表資料
- e-Gov法令検索(デジタル庁)に掲載されている関係法令の条文
実務の現場から:当事務所には、年末調整の書類回収と控除の判定についてのご相談が多く寄せられます。扶養・保険料控除の確認漏れが後の修正につながりやすい部分です。
ご注意(免責事項):本記事は2026年8月3日時点の法令および公的機関の公表資料にもとづく一般的な解説です。税制・社会保険制度は改正されることがあり、同じ制度でも個別の事情によって取扱いが変わります。実際のご判断にあたっては、必ず税理士など専門家にご相談ください。本記事の情報にもとづく判断により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。
税理士法人みらい(税理士法人番号 第1218号)/〒202-0002 東京都西東京市ひばりが丘北3-4-1 みらいビル2F/TEL 042-422-7440/初回相談無料。昭和58年開業・平成18年法人化、ISO9001認証取得。元国税局OBを含む税理士4名と税務・会計スタッフを合わせた総勢17名の体制で、税理士法第33条の2の書面添付制度にも対応しています。