6月開始の住民税特別徴収切替実務

目次

  1. 住民税特別徴収とは
  2. 5月〜6月のスケジュール
  3. 税額決定通知書の見方
  4. 給与計算ソフトへの反映
  5. 退職・休職時の異動処理
  6. よくある質問
  7. まとめ

住民税特別徴収とは、地方税法第317条の6(特別徴収義務者の指定等)および第321条の5(特別徴収の方法による徴収)に基づき、給与支払者が従業員の住民税を毎月の給与から控除し、翌月10日までに市町村に納入する制度です。徴収期間は毎年6月から翌年5月までの12回で、市町村は5月中下旬に「特別徴収税額決定通知書」を事業所に送付します。事業者は通知書を給与計算ソフトに反映し、6月支給給与から新年度の住民税控除を開始する必要があります。総務省は2017年から特別徴収の徹底を推進しており、所得税源泉徴収義務者は原則全員が特別徴収義務者です。本記事では、5〜6月の切替実務を税理士法人みらいが整理します。

住民税特別徴収とは

住民税は前年(1〜12月)の所得を基に翌年6月〜翌々年5月にわたって課税されます。徴収方法は2種類です。

徴収方法内容
特別徴収(地方税法第321条の5)事業者が給与から毎月天引きし市町村に納入。6月〜翌5月の12回
普通徴収(地方税法第319条)納税者本人が市町村から送付された納付書で年4回納付

給与所得者は原則特別徴収となり、副業・退職等で普通徴収となるケースは限定されます。副業の住民税については副業所得の税務もご参照ください。

5月〜6月のスケジュール

住民税特別徴収切替の標準的なスケジュールは以下の通りです。

時期主な実務
1月31日まで前年の給与支払報告書を市町村に提出(地方税法第317条の6)
5月中下旬市町村から事業所に「特別徴収税額決定通知書」が到着
5月下旬従業員交付用の通知書を本人に配布
5月下旬給与計算ソフトに新年度税額をマスタ登録
6月支給給与新年度の住民税控除開始(前年6月分は5月控除済)
7月10日6月控除分の納入期限(毎月10日まで)

5月の経理タスク全体は5月にやるべき経理タスク総まとめもあわせてご参照ください。

税額決定通知書の見方

市町村から事業所に送付される「特別徴収税額決定通知書」には2種類あります。

  • 特別徴収義務者用:従業員ごとの月割税額一覧。給与計算ソフトに登録するための基礎資料
  • 納税義務者用:従業員本人に交付。所得・控除の内訳と各月の税額が記載

記載項目

  • 年間税額:所得割+均等割の合計
  • 6月分:年税額を12で割った1か月分(端数は6月で調整)
  • 7月〜翌5月分:均等の月額
  • 所得控除内訳:基礎・配偶者・扶養・社会保険料・生命保険料・地震保険料・寄附金等

2024年5月から、特別徴収税額通知(納税義務者用)の電子データ受取が可能になっています(eLTAX)。電子化により紙配布作業が省力化されるため、給与計算システムの対応状況に応じて検討する価値があります。

給与計算ソフトへの反映

通知書受領後、給与計算ソフトの従業員マスタに新年度税額を登録します。

  1. 従業員別の月割税額入力:6月分・7月以降分を区分入力(ソフトによっては自動)
  2. 新規入社者の登録:途中入社の場合、前職の特別徴収継続か普通徴収から切替かを確認
  3. 退職者の除外:3月までの退職で異動届提出済の従業員はマスタから除外
  4. テスト計算:6月給与の試算で控除額を検証
  5. 納付書準備:市町村別の納付書の整理(複数自治体に従業員がいる場合)

給与計算自体の実務は新入社員の給与・源泉所得税・社会保険の実務対応もご確認ください。

退職・休職時の異動処理

従業員の異動が生じた場合、「給与所得者異動届出書」を提出元市町村に翌月10日までに提出します。

退職時期住民税の取扱い
1月〜4月退職地方税法第321条の5第2項により、最後の給与・退職金から残額を一括徴収(強制)
5月退職当年度分の徴収完了済
6月〜12月退職原則普通徴収切替。本人希望で一括徴収も可能
転職時新事業所での特別徴収継続が可能(要本人同意・新旧事業所の連携)

休職・育児休業時

給与支払が停止する休職期間中は、本人が直接納付するか、復職後にまとめて控除する取扱いを市町村と相談します。育児・介護休業法に基づく休業中も住民税は課税されるため、事前に従業員へ説明することが重要です。

よくある質問

Q. 特別徴収義務はパート・アルバイトにも適用?

A. 雇用形態を問わず、給与支払があり前年に給与支払報告書を提出した従業員はすべて対象です。ただし、給与支払額が少なく住民税が課税されない場合は通知書も来ません。

Q. 通知書が届かない従業員がいるのはなぜ?

A. ①前年の所得が課税最低限以下、②給与支払報告書未提出、③従業員自身の申告で普通徴収を選択、などのケースがあります。①以外は事業者の手続きミスの可能性があるため、市町村に確認します。

Q. 納入特例制度(年2回納入)は使える?

A. 地方税法第321条の5の2により、給与支払者が常時10人未満の事業所は申請により年2回納入(12月10日・6月10日)の特例が認められます。資金繰りの観点で活用される制度です。

まとめ

住民税特別徴収切替は、5月中下旬の税額通知書受領から6月給与控除開始まで一気通貫で進める年次実務です。地方税法第317条の6に基づく義務であり、所得税源泉徴収義務者は原則全員が特別徴収義務者となります。給与計算ソフトへの新年度税額反映、従業員交付用通知書の配布、退職者の異動処理、納入特例の活用判断など、5月〜6月の集中作業が業務の質を左右します。労働保険年度更新(労働保険年度更新の実務)と並行して進める時期のため、社労士・税理士との連携が業務効率化の鍵となります。なお、個別事案は必ず税理士・社会保険労務士にご相談ください。

この記事の執筆者

税理士法人みらい(東京都西東京市/名古屋支店)。昭和58年開業、平成18年法人化。ISO9001認証取得。元国税局OB税理士を含む15名以上の税理士が在籍し、法人・個人の税務会計をワンストップでサポートしています。

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