決算対策とは、期末を迎える前に利益と納税額を予測し、事業上必要な支出や制度の活用を計画的に行うことです。9月決算法人にとって8月は残り2か月弱という、まだ選択肢が残っている時期にあたります。決算日を過ぎてしまうと打てる手はほとんどなくなるため、いま着手する価値は大きいといえます。
まずは納税予測から
対策の前に、着地見込みを立てることが出発点です。次の手順で進めます。
- 直近の試算表で、期首から現在までの損益を確定させる
- 残り期間の売上・原価・経費を見込む(受注残・仕掛りを反映)
- 減価償却費や引当金など決算整理の見込額を織り込む
- 課税所得を計算し、法人税・地方税・消費税の納税額を試算する
法人税率は、資本金1億円以下の中小法人であれば年800万円以下の所得は15%(適用除外事業者は19%)、800万円超は23.2%が原則です。これに地方法人税・法人住民税・事業税が加わるため、実効税率はおおむね30%前後になります。納税額の目安が見えて初めて、いくら対策すべきかが判断できます。
8月から間に合う主な打ち手
1. 必要な設備投資を前倒しする
事業に必要な設備であれば、期末までに取得して事業の用に供することで減価償却費を計上できます。取得しただけで稼働していない資産は償却できない点に注意が必要です。中小企業者等であれば、30万円未満の減価償却資産を年間300万円まで一括で損金算入できる特例(少額減価償却資産の特例)も活用できます。
2. 決算賞与を支給する
従業員への決算賞与は、一定の要件を満たせば未払計上でも損金算入できます。要件は、事業年度終了日までに支給額を各人別に通知し、通知した全員に翌事業年度開始日から1か月以内に支払い、通知した事業年度に損金経理することです。役員賞与は原則として損金不算入である点にご注意ください。
3. 不要な資産を除却・処分する
使わなくなった固定資産を除却すれば、帳簿価額を除却損として計上できます。実際に廃棄した事実がわかる書類(廃棄業者の証明など)を残しておくことが重要です。
4. 共済制度を活用する
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の掛金は損金算入できます。ただし解約時には収益となるため、将来の出口も含めた検討が必要です。役員個人であれば小規模企業共済の活用も選択肢になります。
5. 税額控除の適用可否を確認する
賃上げ促進税制など、要件を満たせば税額控除を受けられる制度があります。所得を減らすのではなく税額そのものを減らせるため効果が大きく、期中の給与データを確認しておく価値があります。
やってはいけない「対策」
税負担を減らしたいという動機から、次のような処理に手を出してしまうケースがあります。いずれも認められません。
- 翌期の売上を当期に計上しない(期ずれ・売上除外)
- 実態のない外注費・コンサル費を計上する
- 納品されていない在庫を仕入計上する
- 私的な支出を経費に混ぜる
これらは仮装隠蔽と判断されれば重加算税の対象となり、本税に加えて35%〜40%の加算税が課されます。適法な決算対策との違いは「事業上の必要性があるかどうか」「実態を伴っているかどうか」です。判断に迷う支出は、事前にご相談ください。
決算後にやること
申告期限は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。9月決算法人であれば11月30日となります。
- 納税資金を確保しておく(消費税もあわせて)
- 納税額が大きい場合、翌期は中間申告の対象になる可能性がある
- 決算書は金融機関への説明資料にもなるため、内容を把握しておく
- 翌期の予算・資金繰り計画に着地実績を反映する
決算は「終わらせるもの」ではなく、翌期の経営判断の材料です。決算前のチェックリストもあわせてご確認ください。
よくある質問
Q. 9月決算法人の申告期限はいつですか?
A. 原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内、9月30日決算であれば11月30日が申告・納付期限です。定款の定めなどにより株主総会が2か月以内に開催されない場合は、申請により申告期限を1か月延長できる制度がありますが、納付は期限どおりに行う必要があり、延長期間には利子税がかかります。
Q. 決算賞与は未払いでも損金にできますか?
A. 一定の要件を満たせば可能です。事業年度終了の日までに支給額を各人別に通知していること、通知した全員に対して事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること、通知した事業年度に損金経理していることの3つを満たす必要があります。要件を1つでも欠くと当期の損金にできないため、通知の記録を必ず残してください。
Q. 決算対策はいつから始めるべきですか?
A. 決算月の2〜3か月前が目安です。この時期であれば1年の利益がある程度見通せるうえ、設備投資や決算賞与など実行に時間がかかる対策も間に合います。決算月に入ってからでは選択肢が大きく限られ、決算日を過ぎるとほとんど手は残りません。顧問税理士がいれば期中から納税予測を行えます。
まとめ
9月決算法人にとって8月は、まだ複数の選択肢が残る時期です。まず試算表から納税額を予測し、そのうえで必要な設備投資、決算賞与、不要資産の除却、共済の活用、税額控除の適用可否を検討します。事業上の必要性と実態を伴うことが適法な対策の条件であり、仮装隠蔽は重加算税の対象となります。
国税庁「法人税のあらまし」「決算・申告」、中小企業庁「中小企業税制」、e-Gov法令検索(法人税法・租税特別措置法)/e-Gov法令検索。本記事は2026年8月時点で公表されている法令等にもとづく一般的な解説です。税制は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なります。実際のご判断にあたっては最新の公表内容をご確認いただくか、税理士にご相談ください。本記事の情報にもとづく行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。
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