労働保険年度更新とは、労働保険徴収法第19条に基づき、事業主が毎年6月1日から7月10日までの期間に、前年度の確定保険料を精算し当年度の概算保険料を申告・納付する一連の手続きです。労災保険と雇用保険の保険料を「労働保険料」として一括で申告し、賃金台帳に基づく集計、料率適用、納付までを実施します。書類提出と保険料納付の遅延は延滞金の対象となるため、5月から計画的な準備が必要です。本記事では、2026年度の年度更新実務を整理します。
労働保険年度更新とは
労働保険は、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険を合わせた呼称です。両者は別の制度ですが、保険料の徴収は労働保険徴収法に一元化されており、年度更新で同時に申告します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法令 | 労働保険徴収法第19条 |
| 対象期間 | 毎年4月1日〜翌年3月31日 |
| 申告期限 | 毎年6月1日〜7月10日 |
| 提出先 | 所轄労働基準監督署(管轄により都道府県労働局) |
| 納付方法 | 口座振替・金融機関窓口・Pay-easy・電子納付 |
2026年度の雇用保険料率改定への対応は2026年度雇用保険料率改定への実務対応で詳しく解説していますので、年度更新の前にあわせてご確認ください。
2026年度のスケジュール
| 時期 | 主な実務 |
|---|---|
| 5月上旬 | 賃金台帳の集計開始(2025年4月〜2026年3月分) |
| 5月中旬 | 労災対象賃金・雇用対象賃金の区分整理 |
| 5月下旬〜6月上旬 | 労働局からの申告書類が事業主宛に発送 |
| 6月1日〜7月10日 | 年度更新申告書の提出と納付 |
| 7月10日以降 | 納付遅延の場合は延滞金発生(年率は法定) |
2026年7月10日は金曜日のため、通常通りの提出期限です。3回分割納付(口座振替)を選択する場合は別途の納期スケジュールが適用されます。
賃金集計表の作り方
年度更新の中核作業は、前年度(2025年4月〜2026年3月)の賃金集計です。労災保険と雇用保険では「対象となる賃金」と「対象となる労働者」が異なるため、二重の集計が必要です。
労災保険の対象賃金
- 賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として支払われるもの
- 役員報酬は原則対象外(兼務役員の労働者部分は対象)
- 退職金は対象外
雇用保険の対象賃金
- 労災保険と同じ範囲
- ただし、対象労働者は雇用保険被保険者に限定
- 65歳以上の高年齢被保険者も含む(2020年4月以降)
賃金台帳・出勤簿・社会保険料控除等の管理は社会保険料の仕組みと経営への影響で整理した実務とも連動します。
確定保険料・概算保険料の計算
年度更新では、前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を同時に計算します。
| 項目 | 計算式 |
|---|---|
| 確定保険料 | 前年度の実績賃金総額 × 確定保険料率 |
| 前年度概算保険料 | 前回年度更新で申告済みの金額 |
| 差額(精算) | 確定保険料 −前年度概算保険料 |
| 当年度概算保険料 | 当年度の見込賃金総額 × 当年度保険料率 |
| 納付額 | 差額 + 当年度概算保険料 |
当年度の見込賃金総額は、原則として前年度実績の100%〜200%の範囲内で見積もります。新規事業や人員増がない通常事業の場合、前年度実績と同額を概算とすることが多いです。
e-Govによる電子申請
e-Gov電子申請を活用すると、書類郵送の遅延リスクを回避できるほか、添付書類の電子化、申告控えの即時取得、口座振替やPay-easyによる電子納付までワンストップで完了できます。
- 申請ソフト:e-Gov電子申請アプリケーション(無料)
- 必要なもの:事業主の電子証明書、または代理申請する社会保険労務士の電子証明書
- 受付時間:24時間(メンテナンス時を除く)
- 納付方法:Pay-easy、ネットバンキング、口座振替
給与計算ソフトに搭載された年度更新機能を使えば、賃金集計から申告データ作成、e-Gov送信までを連携できます。GW前後の経理・労務スケジュール全体はGW前後の経理・労務スケジュール管理ガイドもあわせてご確認ください。
よくある質問
Q. 年度途中で従業員が増えた場合の扱いは?
A. 概算保険料申告後に賃金見込が当初の2倍を超え、かつ差額が13万円以上となる場合、増加概算保険料の申告が必要です(労働保険徴収法第17条)。
Q. 申告期限に間に合わない場合のペナルティは?
A. 労働保険徴収法第27条に基づく督促後、第28条により延滞金が発生するほか、第21条により認定決定された確定保険料には10%相当額の追徴金が課されることがあります。資金繰りが厳しい場合は事前に労働局に相談することが推奨されます。
Q. 一人親方や役員のみの法人も年度更新は必要ですか?
A. 労働者を1人も雇用していない場合、労働保険の適用事業ではないため年度更新も不要です。役員のみの法人で雇用保険被保険者が在籍する場合は、雇用保険のみの年度更新を行います。
まとめ
労働保険年度更新は、6月1日〜7月10日の限られた期間に賃金集計・確定精算・概算申告・納付を完了する必要がある重要手続きです。GW明けから賃金台帳の集計を開始し、e-Gov電子申請で書類遅延リスクを回避することが推奨されます。新入社員の労務対応(新入社員の給与・源泉所得税・社会保険の実務対応ガイド)と並行して進めるため、税理士・社会保険労務士との連携が業務効率の鍵となります。税理士法人みらいでは年度更新を含む労務手続きを一貫してサポートしています。なお、個別事案は必ず税理士・社会保険労務士へご相談ください。