電子帳簿保存の実務|中小企業の対応ステップ

目次

  1. 電子帳簿保存法とは
  2. 3種類の保存類型
  3. 3要件(真実性・可視性・検索性)
  4. 優良電子帳簿の特典
  5. 中小企業の段階的導入
  6. よくある質問
  7. まとめ

電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿書類の電子保存を可能にする法律で、正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(電帳法)です。①国税関係帳簿の電子帳簿保存(任意)、②書類のスキャナ保存(任意)、③電子取引データ保存(義務)の3類型があり、2024年1月1日以降は電帳法第7条に基づく電子取引データ保存が中小企業を含むすべての事業者に義務化されています。電子保存にあたっては、真実性・可視性・検索性の3要件を満たす必要があり、優良電子帳簿の届出により過少申告加算税の軽減等の特典も得られます。本記事では、中小企業の電子帳簿保存対応を税理士法人みらいが整理します。

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は1998年に成立し、累次の改正を経て電子化を進めてきました。2022年改正で大幅な要件緩和(事前承認制廃止等)、2024年から電子取引データ保存の完全義務化が実施されています。

項目内容
正式名称電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
所管国税庁(財務省)
主な根拠条文電帳法第4条(帳簿)、第5条(書類)、第7条(電子取引)
対象事業者所得税・法人税の申告義務がある全事業者

3種類の保存類型

電子帳簿保存法では、保存対象により3つの類型が用意されています。

類型①:電子帳簿保存(任意)

  • 対象:自己作成の仕訳帳・総勘定元帳・補助元帳・売上帳・仕入帳等
  • 要件:基本要件(一般電子帳簿)と優良要件(優良電子帳簿)の2階層
  • 方式:会計ソフトでの電子保存

類型②:スキャナ保存(任意)

  • 対象:取引先から受領した紙の請求書・領収書等
  • 要件:解像度200dpi以上、カラー画像、タイムスタンプ等
  • 方式:スキャナで電子化して保存(原本廃棄可)

類型③:電子取引データ保存(義務)

  • 対象:電子的に授受した請求書・領収書(メール添付PDF・クラウド・EDI等)
  • 要件:真実性・可視性・検索性の3要件
  • 義務化:2024年1月1日以降の取引から完全義務化

電子取引保存の詳細は電子取引データ保存の実務対応ガイドもあわせてご参照ください。

3要件(真実性・可視性・検索性)

電子取引データ保存において、3要件を満たすための具体的な対応は以下の通りです。

真実性の確保(次のいずれか)

  • タイムスタンプ付与(一般財団法人日本データ通信協会認定)
  • 訂正・削除履歴が残るシステムでの保存
  • 訂正・削除を防止する事務処理規程の制定・運用

可視性の確保

  • ディスプレイ・プリンタの整備
  • 速やかな出力対応(税務調査時の要件)
  • システム関係書類(マニュアル等)の備付け

検索性の確保

  • 取引年月日、金額、取引先名による検索
  • 範囲指定検索(日付範囲・金額範囲)
  • 2項目以上の組み合わせ検索
  • 判定期間の課税売上高5,000万円以下の事業者は検索要件を簡易化可能

優良電子帳簿の特典

優良電子帳簿(電帳法第8条第4項)の要件を満たし所轄税務署長に届出を行うと、税制上の特典が得られます。

特典内容
過少申告加算税の軽減10%→5%に軽減(修正申告等の場合)
青色申告特別控除(個人)55万円→65万円(要件追加で)
事前届出適用を受ける事業年度(個人は年)開始前まで

優良電子帳簿の追加要件

  • 訂正・削除履歴の保存
  • 帳簿間の相互関連性の確保
  • システム関係書類(マニュアル・概要書等)の備付け

会計ソフトのほとんどは優良電子帳簿の要件に対応しており、設定変更で対応可能なケースが多いです。

中小企業の段階的導入

電子帳簿保存への段階的な対応ステップを示します。

  1. ステップ1:電子取引の棚卸:受領経路(メール・クラウド・EDI等)の洗い出し、月間件数の把握
  2. ステップ2:保存ルールの策定:保存場所(ファイルサーバ・クラウドストレージ)、命名規則、フォルダ構成
  3. ステップ3:3要件の充足:真実性(事務処理規程作成)、可視性(PC・プリンタ整備)、検索性(ファイル名規則)
  4. ステップ4:従業員教育:受領後即時保存、紙印刷のみは不可、ルール周知
  5. ステップ5:システム導入検討:請求書受領システム、会計ソフト連携、IT導入補助金活用
  6. ステップ6:スキャナ保存の検討:紙書類の電子化で完全ペーパーレス
  7. ステップ7:優良電子帳簿への移行:税制特典取得

経費精算ルール整備(経費精算ルールの整備と社内規程の作り方)と一体で進めることで、相乗効果が得られます。

よくある質問

Q. 紙で印刷して保存しているだけでは違反になる?

A. 2024年1月以降、電子取引で受領したデータの紙印刷のみでの保存は原則違反です。猶予措置として「相当の理由がある場合」は紙保存も認められますが、ダウンロード時の電子データも保存し、税務調査で速やかに提示できる必要があります。

Q. 検索要件をシステム導入なしで満たす方法は?

A. ファイル名を「2026-05-15_3300円_株式会社A.pdf」のように「日付_金額_取引先」で統一し、Excel索引簿を作成することで実質的な検索性を確保できます。基準期間課税売上高5,000万円以下なら検索要件は簡易化されます。

Q. 電子インボイス(Peppol)との関係は?

A. Peppolは国際的な電子インボイス規格で、国内ではJP-PINTフォーマットが採用されています。Peppolで受領した電子インボイスも電子取引データとして電帳法第7条の対象です。

まとめ

電子帳簿保存への対応は、2024年1月の電子取引保存義務化を起点に、すべての中小企業にとって必須の実務となりました。3類型(電子帳簿・スキャナ保存・電子取引)と3要件(真実性・可視性・検索性)を理解し、自社の取引実態に応じた段階的導入を進めることが重要です。優良電子帳簿の届出により過少申告加算税の軽減等の特典も得られます。インボイス制度(インボイス制度への中小企業対応)、経費精算ルール(経費精算ルールの整備)と組み合わせて、ペーパーレス・電子化の経営インフラを構築しましょう。なお、個別事案は必ず税理士にご相談ください。

この記事の執筆者

税理士法人みらい(東京都西東京市/名古屋支店)。昭和58年開業、平成18年法人化。ISO9001認証取得。元国税局OB税理士を含む15名以上の税理士が在籍し、法人・個人の税務会計をワンストップでサポートしています。

事務所案内を見る税理士紹介

電子帳簿保存対応のご相談は税理士法人みらいへ

初回相談は無料です。電子取引保存、スキャナ保存、優良電子帳簿届出、システム導入支援までワンストップでサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。

無料相談を申し込む TEL: 042-422-7440