電子帳簿保存法の改正により、2024年1月1日以降、電子取引(メール添付・クラウド請求書・ECサイト取引など)で授受したデータは、電子データのまま保存することが原則義務化されました(電子帳簿保存法第7条)。従来のように「印刷して紙で保存」することは原則認められません。本記事では、中小企業が電子取引データ保存を実務上どう運用するかを整理します。
電子取引データ保存義務化の概要
電子取引とは、契約書・請求書・領収書・見積書など、取引に関する情報を電磁的方式(電子メール、EDI、クラウドサービス、ウェブサイトダウンロードなど)で授受する取引全般を指します。
| 取引形態 | 保存義務 |
|---|---|
| メール添付PDFで受領した請求書 | 電子保存(義務) |
| クラウド会計・請求書サービスで受領 | 電子保存(義務) |
| ECサイト購入時のPDF領収書 | 電子保存(義務) |
| 紙で郵送された請求書 | 紙またはスキャナ保存(任意) |
全体像は電子帳簿保存法の改正ポイントと対応策で整理していますので、制度の概要はそちらも併せてご確認ください。
保存要件(真実性・可視性・検索性)
電子取引データの保存には、以下の3つの要件を満たす必要があります。
真実性の確保(以下のいずれか)
- タイムスタンプを付与して保存
- データ訂正・削除の履歴が残るシステム、または訂正削除できないシステムで保存
- 「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を定めて運用
可視性の確保
- 電子計算機・プログラム・ディスプレイ・プリンタとその操作説明書を備え付ける
- データを整然とした形式および明瞭な状態で速やかに出力できる
検索要件
- 取引年月日・取引金額・取引先で検索できること
- 日付・金額は範囲指定検索ができること
- 2以上の項目を組み合わせた検索ができること
猶予措置と相当の理由
2024年1月の義務化に際し、「相当の理由」がある事業者については、検索要件の充足などについて猶予措置が設けられています。
Q. 猶予措置の「相当の理由」とは?
A. 人手不足・システム対応の遅れ等、検索要件等を満たして保存することが困難な事情を指し、事前申請は不要です。ただし、税務調査の際にデータを「ダウンロードの求め」に応じて提示し、プリントアウトを提示できる体制は必要です。
Q. 猶予措置はいつまで続きますか?
A. 猶予措置の期限は定められていませんが、「相当の理由が解消される等の状況が生じた場合」は通常の要件での保存が求められます。中長期的には全事業者が検索要件・真実性要件を満たす運用を目指す必要があります。
具体的な運用パターン
中小企業で実務的に選択しやすい運用パターンは以下の3つです。
- クラウド会計・請求書サービスで完結する方法:freee、マネーフォワードクラウド、弥生会計オンラインなどの電子帳簿保存法対応モードを利用。最も簡便。
- PDF+ファイル命名ルールで検索性を確保する方法:「20260410_株式会社〇〇_110000円.pdf」のように命名。Windows検索・Mac Finder検索で対応可。事務処理規程の整備が必要。
- 国税庁公表のExcel索引簿を併用する方法:国税庁が公表する索引簿テンプレートに取引年月日・取引先・金額を入力し、ファイル名と紐付け。
当事務所では、顧問先の規模・システム環境に応じて上記いずれかの方式をご提案しています。詳しくは法人向け税務顧問サービスの中で個別にサポートしています。
社内ルール整備と税務調査対応
電子取引データ保存は、システムだけでなく社内ルール(事務処理規程)の整備が不可欠です。以下の内容を盛り込んで文書化しましょう。
- 保存対象となる電子取引データの範囲
- 保存先(共有フォルダ/会計ソフト)と命名ルール
- 訂正・削除の承認フロー
- 検索要件を満たすための方法(ファイル名ルール、索引簿)
- 担当者・責任者の明記
税務調査では、電子取引データの保存状況が必ず確認されます。税務調査でよく指摘される項目も参考に、日頃から運用実績を残しておきましょう。個別事案は必ず税理士にご相談ください。
まとめ
電子取引データの電子保存は義務であり、紙印刷での代替は原則認められません。真実性・可視性・検索性の3要件を満たす方法を選び、社内の事務処理規程を整備することが重要です。クラウド会計ソフトの活用、ファイル命名ルール、索引簿運用など、自社に合った方法を選んで継続運用しましょう。税理士法人みらいでは、電子帳簿保存法対応の社内体制構築をサポートしています。