事業承継の進め方と税制優遇措置

事業承継とは

事業承継とは、会社の経営権や資産、ノウハウなどを現経営者から後継者へ引き継ぐことです。中小企業庁の調査によれば、経営者の高齢化が進む中、後継者不在による廃業が年間数万社に上るとされており、円滑な事業承継は日本経済にとって重要な課題です。

事業承継は単なる代表者の交代ではなく、「人(経営)の承継」「資産の承継」「知的資産の承継」の3つの要素を計画的に進める必要があります。

事業承継の3つの方法

1. 親族内承継

子や配偶者など親族に事業を引き継ぐ方法です。日本の中小企業では最も一般的な形態でしたが、近年は後継者となる親族がいないケースが増加しています。

2. 従業員承継(親族外承継)

役員や従業員など親族以外の社内人材に引き継ぐ方法です。MBO(マネジメント・バイアウト)の形を取ることもあります。

3. M&A(第三者承継)

社外の第三者に事業を売却・譲渡する方法です。近年、後継者不在の中小企業の選択肢として急速に増加しています。

事業承継の準備期間

事業承継には一般的に5年~10年の準備期間が必要とされています。後継者の育成、株式の移転、取引先との関係構築など、計画的に進めることが成功の鍵です。早めの着手をお勧めします。

事業承継税制(特例措置)

事業承継税制は、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)に基づく制度で、後継者が先代経営者から贈与または相続により非上場株式を取得した場合に、贈与税・相続税の納税が猶予・免除される制度です。

一般措置と特例措置の比較

項目 一般措置 特例措置
対象株式 総株式数の最大3分の2まで 全株式が対象
納税猶予割合 贈与税100%、相続税80% 贈与税・相続税ともに100%
承継パターン 1人の先代経営者から1人の後継者 複数の先代経営者から最大3人の後継者
雇用確保要件 5年間平均で8割維持が必要 実質的に撤廃(未達成でも理由書提出で継続)
事前計画 不要 特例承継計画の提出が必要

特例措置の適用要件

特例措置を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

特例承継計画の提出

特例措置の適用を受けるためには、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて「特例承継計画」を作成し、都道府県知事に提出する必要があります。

特例承継計画の提出期限にご注意

特例承継計画の提出期限は、当初2024年3月31日まででしたが、法人版は2027年9月30日まで延長されています。計画提出後、実際の贈与・相続は計画記載の期間内に行う必要があります。

事業承継の進め方 ― 5つのステップ

ステップ1:現状の把握

会社の経営状況(財務内容、事業の将来性)、経営者自身の資産状況、後継者候補の有無と適性を客観的に把握します。「事業承継診断」を活用するのも有効です。

ステップ2:承継方法の決定

親族内承継、従業員承継、M&Aのいずれの方法で承継するかを決定します。後継者候補との対話を重ね、本人の意思を確認することが重要です。

ステップ3:事業承継計画の策定

具体的なスケジュール、株式の移転方法、後継者の育成計画、関係者への説明方針などを盛り込んだ計画を策定します。税理士や中小企業診断士などの専門家の助言を受けることをお勧めします。

ステップ4:計画の実行

策定した計画に基づき、株式の移転、経営権の委譲、取引先・金融機関への説明などを段階的に進めます。事業承継税制を活用する場合は、特例承継計画の提出と認定申請を行います。

ステップ5:承継後のフォロー

経営権の移転後も、先代経営者が一定期間サポートすることで、スムーズな引き継ぎが可能になります。事業承継税制の適用を受けている場合は、継続届出書の提出が必要です。

事業承継に関する支援制度

事業承継税制以外にも、中小企業の事業承継を支援する制度があります。

まとめ

事業承継は、企業の存続と発展にとって極めて重要なプロセスです。税制優遇措置を最大限に活用しつつ、計画的に準備を進めることが成功の鍵となります。特に事業承継税制の特例措置は、贈与税・相続税が100%猶予される強力な制度ですので、要件を満たす場合は積極的に活用を検討しましょう。

事業承継の方法選択から税制の活用まで、お気軽にご相談ください。

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