不動産所得とは、所得税法第26条に定義され、土地・建物等の不動産、不動産の上に存する権利、船舶・航空機の貸付けによる所得をいいます。総収入金額(家賃・地代・更新料・礼金等)から必要経費(減価償却費・修繕費・固定資産税・借入金利子等)を控除して算出し、給与所得・事業所得などと合わせて確定申告します。所得税法第69条により損益通算が可能で、青色申告(所得税法第143条)を選択すると最大65万円の特別控除や青色事業専従者給与の必要経費算入などのメリットがあります。本記事では、不動産オーナーが押さえるべき確定申告の計算方法と必要経費の範囲を税理士法人みらいが整理します。
不動産所得とは
所得税法では、所得を10種類に分類しています。不動産所得は事業所得とは別カテゴリーで、特有のルールが適用されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法令 | 所得税法第26条 |
| 対象 | 土地・建物の貸付け、地上権・賃借権、船舶・航空機の貸付け |
| 該当しない例 | 不動産売買による譲渡所得、駐車場経営の役務提供型(事業所得・雑所得の場合あり) |
| 申告期限 | 所得税法第120条により翌年3月15日 |
不動産オーナーの青色申告全体については不動産オーナーのための青色申告ガイドもご参照ください。
所得計算の基本式
不動産所得の計算式は以下の通りです。
不動産所得 = 総収入金額 − 必要経費 − 青色申告特別控除(青色のみ)
総収入金額に含まれるもの
- 家賃・地代(月額賃料)
- 礼金・更新料・名義書換料(返還を要しないもの)
- 共益費・管理費
- 敷金・保証金のうち返還を要しない部分
- 駐車場・駐輪場の使用料
敷金・保証金のうち返還を要する部分は預り金(負債)であり、収入には含めません。退去時に返還しない部分が確定したタイミングで収入計上します。
必要経費の範囲
不動産所得の必要経費は所得税法第37条に基づき、収入を得るために直接要した費用が対象です。
| 経費項目 | 内容 |
|---|---|
| 減価償却費 | 建物・建物附属設備の取得価額を耐用年数にわたり按分(所得税法第49条) |
| 租税公課 | 固定資産税・都市計画税、印紙税、不動産取得税(取得時) |
| 修繕費 | 原状回復・通常の修繕(資本的支出との区分が論点) |
| 借入金利子 | 建物取得・修繕資金の利子部分(元金返済は経費外) |
| 損害保険料 | 火災保険・地震保険(事業用部分) |
| 管理費・委託料 | 管理会社への委託料、共用部分清掃費 |
| 仲介手数料・広告料 | 入居者募集に係る費用 |
| 水道光熱費 | 共用部分 |
修繕費と資本的支出の区分は税務調査でも頻出論点です。1件20万円未満の小規模修繕や、3年以内の周期で行われる維持修繕は修繕費として一括費用計上できますが、資産価値・耐久性を増す工事は資本的支出として減価償却の対象となります(法人税基本通達7-8-1〜7-8-5、所得税にも準用)。経費計上の判断は経費として認められるもの・認められないものもご参照ください。
青色申告の活用
青色申告(所得税法第143条)を選択すると以下のメリットが得られます。
- 青色申告特別控除:事業的規模+複式簿記+電子申告等で65万円、簡易簿記10万円
- 青色事業専従者給与:事業的規模で生計同一親族への給与を必要経費算入
- 純損失の繰越控除:3年間の繰越(所得税法第70条)
- 少額減価償却資産の特例:30万円未満の資産を即時償却(租税特別措置法第28条の2)
- 貸倒引当金:事業的規模の場合、年末残高の5.5%(金融業以外)
事業的規模の判定基準は所得税基本通達26-9により、概ね「独立家屋5棟以上」または「アパート・貸間10室以上」とされています(5棟10室基準)。複合所有の場合は、家屋1棟=アパート2室相当として合算判定します。
損益通算と損失繰越
不動産所得が赤字となった場合、所得税法第69条により他の所得(給与所得・事業所得等)と損益通算が可能です。
損益通算の制限(土地取得借入金利子)
租税特別措置法第41条の4により、不動産所得の損失のうち、土地等の取得に係る借入金利子に相当する部分の金額は損益通算の対象から除外されます。建物取得分の利子は通算可能ですが、土地分は不可となるため、借入の充当順位(建物優先)の整理が重要です。
純損失の繰越
青色申告では、損益通算してもなお残る純損失を翌年以後3年間繰越控除できます(所得税法第70条)。白色申告では「被災事業用資産の損失」など限定的な繰越のみ可能です。
よくある質問
Q. サラリーマン大家で給与と通算して還付を受けるには?
A. 給与所得者でも不動産所得が赤字なら確定申告で損益通算できます。給与の源泉徴収済税額から還付されます。減価償却費を計上することで会計上の赤字(節税)と現金収支のプラスを両立できるケースがあります。
Q. 駐車場経営は不動産所得?事業所得?
A. 月極駐車場(場所貸しのみ)は不動産所得、コインパーキング(管理・役務提供あり)は事業所得または雑所得となるのが一般的です。所得税基本通達27-2参照。
Q. 賃貸物件を売却した場合の所得は?
A. 譲渡所得(所得税法第33条)として別建てで申告します。所有期間5年超は長期譲渡所得(税率15%+住民税5%+復興特別所得税)、5年以下は短期譲渡所得(30%+9%+復興特別所得税)です。
まとめ
不動産所得の確定申告は、所得税法第26条の計算式に基づき総収入金額から必要経費を差し引いて算出します。減価償却費・修繕費・固定資産税・借入金利子等の経費を漏れなく計上し、青色申告で最大65万円の特別控除や事業的規模(5棟10室)での青色事業専従者給与活用を狙うことで、税負担を最適化できます。赤字時の損益通算では土地取得借入金利子の制限に注意し、青色申告では3年間の損失繰越を活用します。固定資産税の課税明細書チェックは固定資産税・都市計画税の課税明細書もあわせてご確認ください。なお、個別事案は必ず税理士にご相談ください。